第64話:残り42日

 ソロウェディングをしなくたって、20代最後の今より35歳の私の方が綺麗に決まっている。私は先日、35歳の私を幸せにするって決めたのだ。5年後にどうなっていたいか考えるなんて鬼が大草原不可避だけど、今よりずっとずっと豊かで幸せな自分でいたいとは思う。

 若いほうが綺麗なんて嘘だ。歯並びのガチャガチャした20代と矯正した30代だったら、30代のほうが絶対に綺麗だ。長年のコンプレックスを解消した後のほうが、いい顔してるに決まっている。

 遺影ももう撮ってある。大学卒業時、袴や着物をレンタルしたり、実家から振袖を送ってもらう代わりに、新宿伊勢丹の写真館で撮った写真。ちょっと歯並びの悪い本仮屋ユイカみたいな写真に仕上がっていた。葬式ではこれを使ってもらう。だから今はソロウェディングはいいや。ドレスは最高に身体を仕上げて着たほうがかっこいいもの。やっぱり今じゃないよねタイミング的に、と、やっと結論づいた。

 

 ソロウェディングをやるとしたらだいたい10万くらいの予算を考えていた。この分はパーソナルトレーニングに充ててもいい。肌の治療に充ててもいい。時間を買ってもいい。何やってもいいけど、今の人生を楽しくすることに使おう。貯金じゃなく、投資でもなく。

 

 イライラしている。誰かの努力が実ったとき、その人を支える親しい人がいればいるほど、「周りに助けてくれる人がいるなら出来て当然だ」と捻くれてしまう。

 一人で、本当にたった一人で頑張れる人なんて一握りなのだ。ほとんどは応援する親しい友達や家族や理解者がいる。私はその一握りになれるとはあんまり思えない。でもなれるかどうか考えている暇はない。やるしかない。

 別に難関資格を取るとかそういうんじゃない。毎日きちんと歯磨きするとか、ちょっとでも本を読むとか、3食たべるとか、好きなことを勉強するとか、ストレッチしてから寝るとか、簡単なこと。自分を幸せな気持ちにしてくれる工程をサボらないこと。自分を、自分の力だけで幸せな35歳の私に連れて行くことを、諦めないこと。たったそれだけの簡単なことを、明日から毎日続けるだけのこと。

 

 もう誰も近づかないで欲しい。どうせいつまでたっても私は一人なんだから、せめて孤独を飼い慣らすための時間くらい、私から奪わないでくれ。