第47話:残り121日

 弊社の多くのメンバーは、自分がいついなくなったり倒れたりしても大丈夫なように担当業務をなるべく噛み砕いてマニュアル化する、なんてことはしないらしい。急な異動が起きても「前任者に聞けばいい」というスタンスのようだ。なるほど、そういう考え方もあるのかと新鮮だった。

 夏らしいことをしないまま8月が終わろうとしている。去年の夏は閉園前のとしまえんに滑り込んだし、大山にも登った。さて今年はどうだ。職場と家の往復しかしていない。浴衣は何年着ていないだろう。夏祭りも遠い思い出だ。花火大会は一昨年観に行ったんだった。マスクなしで人混みに混ざれるのはいつになることやら。

 

 恨もうと思えば何もかもを恨める、そんな心境で生きている。今日はついに、職場でひとりばっくれた。気持ちは分からなくもない。それを羨ましい、と思う我々も、きっと何かが違ったらそうだったのだ。無責任だ、なんて責められないなと思う。

 

 誕生日に欲しいものが決まった。ミラノコレクションを買おう。小学生くらいの時から、冬にチラシを見つけては「綺麗だなあ」と眺めてきたおしろい。これがいい。これが欲しい。だってなんか変身出来そうだもん、今年の特に。魔法使いのアイテムだよこれ。明日ドラッグストアで予約してこよう。これは心の潤いを保つための外出なので必要火急です。ですよね?