第31話:残り148日 その2

 人間と関わりたくない、誰も私に指図するな、否定的な言葉をかけるな、何も聞かない何も言いたくない何もしたくない!!!!!うわーーーー!!!!!!

 と、体の外側は社会性を纏っていても内側が天上天下唯我独尊の塊になっていたここ数日。今は少し落ち着き、三歩進んで二歩下がりながら穏やかさを取り戻している。

 

 まず、元婚約者との相互フォローを外した。あの人の心の動きをいちいちTwitterで知りたくないし、心地よいタイムラインを作りたいし、私の心の動きを知られたいとも思わないな、という気持ちで、勢いでフォローを外してブロ解した。お互い鍵アカだからもう見られない。直後は落ち着かなかったけれど、数日経てばなんてことはなくなった。

 オリンピックの開会式は、直前にどたばたと人が辞めた状態でどうなるのかという興味があったので観るつもりでいた。高校時代の友人グループのLINEがあって、そのうち東京に住んでいる一人がブルーインパルスの写真を上げていたのをきっかけに思い立ち、都合の合う3人で開会式の同時鑑賞会をした。

 これが予想以上に面白かった。1人は各国入場選手のユニフォームや靴に注目し、もう1人はそれぞれの国の情勢を語り、私は演出内容についてあれこれ話す。同じ空間で同じ時間を過ごした人間がこうも視点が違うのかと、なんなら開会式よりも多様性を実感したし、感動すら覚えた。

 クレジットカードのポイントが貯まると映画観賞券に交換する人間なので、手元にある2枚の鑑賞券を使い、「サイダーのように言葉が湧き上がる」と「鬼滅の刃 無限列車編」を観てきた。前者は好き。この夏公開されたアニメ映画は、これと「竜とそばかすの姫」しか観ていないけれど、どっちが好きか選べと言われたら私は断然こっちだ。鬼滅はストーリー知っていて観たのにめちゃめちゃ泣いた。

 「サイダーのように言葉が湧き上がる」、いいですよ。90分で、誰も傷つけず爽やかな気持ちになれる映画。観終わってから気づいたけど、タイトルも五七五になってたのね。市川染五郎が声をあてていると聞いて、鑑賞券もあるし行こうかな、くらいの気持ちで観に行ったけど、とっても好みでした。エンドロールに横浜翠嵐、横浜サイエンスフロンティアって観た瞬間「俳句甲子園だ!!」って、「これもしかして劇中の俳句、高校生たちが作ってるのか!!」って理解して、なんかそれも含めてとってもよかった。

 

 oggiとかpreciousに出てくるジュエリーや時計の写真を眺めるのが好きで、「綺麗だなあ。30歳の節目に、私も何かひとつ記念になるもの買おうかな」と思っていたのだけれど、こうして素敵な作品に出合うと「宝石にお金出すより、同じ額を映画・漫画・書籍代に充てるほうが満足度高いかも」と思ってしまう。綺麗なものは見ていて気持ちがいいし、あったらあったで幸せな気分にはなれるけれど、どっちの使い方がいいか迷う。

 婚約指輪はきらきらして綺麗だったし、見ていて幸せな気持ちになった。相手がいなければ身に着けちゃダメなものでもないし、記者時代、左薬指に指輪をはめて取材に行ったときは変な人に絡まれなかったし(「指輪付けたら絡まれなくなるんじゃない?と提案してくれた当時の上司、ありがとう)、厄除けにもなるから婚約指輪買うのも楽しそう。

 あそうだ、前に住んでいた部屋でカビまみれになって泣く泣く捨てた、母のお下がりのバーバリーのトレンチコート。あれと同じようなものを買いたいなとも思っているんだった。まだロゴが変わる前の、生地も茶色じゃなくて光沢がある玉虫色というか、うっすら緑がかっている時代のバーバリー。生地が重いんだけど、着ていて不思議と心が落ち着くから好きだったんだよね。クリーニングでは到底取り切れないだろうと思えるひどいカビで捨てたけど、実際どうだったんだろう。

 

 明日の連休最終日は何しようかな。それにしても、休日の過ぎる速さはどうしてこんなに平日と違うのか。謎だ。