第38話:残り140日

 この夏最後のジェルネイル(脚)に行ってきました。今まで赤しかやったことなかったんだけど、気分を変えて、今回はターコイズブルーにしました。今、私の脚の爪は人外の色をしています。ゼルダの、チュチュゼリーを落としてくれる水色のモンスターを思い出す色です。

 

 今日は欲しいものについての話をしようと思います。ここ数週間、30歳記念に何かいいジュエリーとかいいお財布を買おうかな、という気持ちと、いや買ったところで着けないじゃん今でも使ってないんだし、を行ったり来たりしていました。ジュエリーであれば、真珠のイヤリングか、ディアマンレジェとかの一粒ダイヤのネックレス。財布だったらカルティエのガーランドドゥかマストドゥ。ガーランドドゥは縁の金色刺繍が可愛いくて惹かれて、マストドゥはクラシカルで好きなんですよね。

 でも、それを持っているからといって私が何か変わるわけじゃないし、ダイヤなら人工ダイヤのほうが安いし倫理的かもしれない。なんなら、スワロフスキーとかでも遠目から見たら変わらないかもしれない。私のテンションは違うだろうけれど。そう思うと、記念品を買うという選択が、それほどいいものとは思えなくなってきました。

 

 ところで、そもそもなんで私はこういうものを買うという選択肢を出したんだっけと考えています。Twitterやインスタの素敵なお姉さま達がそういうことをしているから?じゃあ、それを買ったらお姉さま達みたいに素敵になれるんだっけ?

 

 ジュエリーを付けていても、高級メゾンの物を持っていても、素敵に見えない人だっている。じゃあその差はどこにある?素敵な人は、朗らかに笑い人生を楽しんでいるように見える。立ち振る舞いが美しくて、会話が楽しくて、人生の辛さも引き受けて生きていて……あれ、それって、その装飾品が無かったらその人の輝きって曇るんだっけ?違うよね?

 

 じゃあ、まずは私が思う素敵な人を目指す方が、到達する方が先じゃない?

 

 私が思う素敵な人は、こんな特徴があります。

 仕事で成果を出している。チーム運営が上手で、人の良いところを活かすことが出来る。

 信頼し合える友人がいる。互いに理解し合おうという態度が根底にあり、お喋りを楽しめる。

 健やかである。

 学びに価値を置く人である。

 創造することと、それに纏わる困難さと楽しさを知っていて、それでもなお創ることを辞めない人である。特に音楽と文章について。

 横顔が絵になる人である。

 好きなものがあって、熱中でも付かず離れずでもいい、その人にちょうどいい温度感で、それに没頭している。

 

 私は歯並びが良くありません。子どもの頃に数年かけて一度矯正しているのだけど、そこそこ特殊なケースだったせいか、今もまだ、お世辞にも綺麗な歯並びとは言えません。顎の骨が薄いから抜歯を伴う矯正はやらない方がいいらしくて、だから例え矯正しても、思うような歯並びや顔つきにならない可能性が高いそうです。

 でも。

 じゃあ、歯並び以外を私の理想的な私にしたらどうなるんだろう。歯並びなんて気にならないくらい、自分を美しい生き物として認められるんじゃないだろうか。そう思うと、矯正の費用は貯めつつ、それ以外の積み重ねを粛々と淡々と続けていく方が、宝石やメゾン物を買うよりいいんじゃないかと思います。

 

 25歳の時、「30歳になったらバイオリンを始めよう。この手の小ささでもギリギリセーフだし、管楽器と違って矯正中も続けられる。ピアノに比べて、譜面を見て『またオクターブだ……』と悲しくなることも少なさそうだ」と思って以来、30歳からバイオリンをやることは決めています。それを考えてもやっぱり、宝石も高い財布も、今の私には必要ないみたいです。

 

 欲しい物、よく考えるとそこまで欲しいものじゃなかったり、昔からものすごく執着していたり、他人の欲望を自分の欲望と勘違いしていたり、ひたすら自問自答すると別の世界が見えてきますね。これはこれで楽しい。お金は大事なので、なぜそれが欲しいのか、買ったら・買わなかったらどんな影響があるのか考えて、納得できるお買い物をしたいものですね。